神田川と小石川後楽園に囲まれた商店街の一角に古くから店を構えていた大河原漆工房が、市街地再開発でビルの地下に移転することになり内装設計をさせていただきました。ビルの内装に杉板など燃える材料を使用する場合はさまざまな配慮が必要となりました。
大河原漆工房は床框、天井縁、建具など建築の漆塗りを中心に、家具や仏具、茶道具などの分野でも活躍されています。本物の漆塗りは他の塗料では出すことのできない深みのある仕上がりとなりますが時間と予算がかかることも確かです。漆を塗る材料は下地処理をしてから1年ほど枯らせ、木地がやせたところで漆を塗りと磨き工程を幾度となく繰り返します。工房には預かって何年も寝かせている下地状態の仏具や茶道具などもありますが、実際に建築で漆塗りを使うとなると漆の下地に使う材料の手配を可能な限り早めたとしても、漆塗りの工期は数か月程度に限られてしまいますので周到な準備が不可欠です。工房では工事完了後にご自身で木部を拭き漆に仕上げています。