「伝統工芸品を一般の方にも広く紹介し、更には地域の学びの場としてもらいたい」というコンセプトから、和紙、染め物、鎌倉彫、漆の器、香などの手仕事の日用品を揃えるショップを1階に、展示会やワークショップが行えるギャラリースペースを2階に配置したお寺の直営施設を計画しました。敷地には古い住宅が建っていましたが、禅寺の物を無駄にしない精神と、工事費を抑える意味で建て替えではなく全面改修としました。
築35年の住宅とはいえ、バランスの良い形状でしたのでうまく改修できると感じました。エントランスを一坪増築し間取りを変更していますが、柱や梁・屋根などの既存の構造部材はそのままに基礎や壁面の耐震補強をしています。禅寺のもつ凛とした雰囲気を表現するためモノトーンを基調とし、ショップのコンセプトに従い建物の各所で職人のもつ手仕事の技を生かし、また素材感のある材料を用いました。
エントランスの床は枯山水をモチーフにデザインした庵治石貼り、欅と栗の古材柱を使用。飾り棚の壁・甲板は和紙貼りで和紙を墨で染めて泥を練り込む技法を用いました。屋根・外壁を残し、内部を全面スケルトンにして耐震補強を施しました。石貼り、経師、染色、錺金物、和紙、木工など手仕事が生きるように職人と相談しながら計画を進めています。