南側にお寺の庭が広がるすばらしい借景の見込める土地が見つかりました。間口が狭く奥行きのある土地の形状を上手に使いこなすことと、現時点では体力に不安はないものの老後を安心して過ごせる住宅にしたいとのご要望でした。
南北に細長い敷地に対して中庭を設けることで各部屋への通風と採光に対応しました。バリアフリー住宅を計画する場合、現状は健康でも将来を見越してバリアフリーとしたいということなどがありますが、徹底したバリアフリー化は健康なときにはかえって不便だったり、コスト高が気になったりします。どの程度の「バリアフリー住宅」にするか方針をよく練ることがポイントと言えます。
バリアフリーの配慮として、アプローチでは前面道路から玄関まで車椅子で移動が出来るように段差をなくし、玄関では框の高さを低く抑え、腰掛を設けました。トイレは車椅子でも入れる大きさにし、扉も開き戸より引き戸、入口の向きも車椅子仕様に適した作りにしています。手摺は将来設置が出来るように要所に下地を仕込んでいます。屋内での上下階の移動はエレベーターのみとなっていますが、中庭の外階段で裏の動線に対応します。
[和の素材]を生かすデザイン手法 建築知識2013年5月号に掲載されました。